サンクコストの束縛

思わぬ落とし穴

サンクコストの誤謬とは、すでに支払ってしまったお金や時間を取り戻そうとして、合理的ではない判断を下してしまう心理的傾向を指します。
どれだけ失敗が明らかでも「ここまで使ったんだから」と行動を続けたり、借金を重ねることで過去の投資を正当化しようとしてしまうのです。

Aさんはかつて夢見ていた小さなカフェをオープンするために、自己資金20万円と友人からの借り入れ30万円、合計50万円を投入しました。
初期投資は内装工事、厨房設備、広告チラシの印刷を含めて瞬く間に消え、オープンから1カ月後の売上は予想の半分程度に留まりました。
「ここまで準備に時間もお金も使ったのだから」と自らに言い聞かせ、追加でカードローン50万円を申し込みました。

2カ月目も売上は停滞し、固定費だけが増加する中、Aさんは「もう少し運営を続ければリピーターが増えるはずだ」と信じて新たにキャッシング20万円を選択しました。
返済のために別の消費者金融でさらに10万円を借り、最終的には5つの金融機関から借金を重ねる状況に陥りました。

借り入れ額が合計130万円を超えた時点で、Aさんの毎月の返済総額は15万円を超え、家賃や食費を削っても収支は赤字に。
にもかかわらず「これまでの借金を放棄するわけにはいかない」という罪悪感が大きくなり、借金の追加→返済延期→さらなる借り入れという悪循環が続きました。

この事例では、Aさんが過去の投資に拘り、目の前の「回収不可能なコスト」を基準に意思決定を行ったことがすべての始まりでした。
未来のキャッシュフローよりも「ここまで使った」という感情が優位となり、新規顧客の獲得やコスト削減といった合理的な対策を取る余地を狭めてしまったのです。

サンクコストの誤謬は、多重債務という形で私たちの生活を厳しく締め付けます。
同様の状況に心当たりがあるなら、まずは「過去の支出を白紙の状態とし、今後の収支だけで判断する」この習慣を取り入れるだけでも、泥沼から抜け出すための第一歩となるでしょう。

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