家を手放さずに返済し続けられる
■制度の概要
民事再生には「住宅ローン(住宅資金貸付債権)特則」という制度があり、小規模個人再生、給与所得者等再生のいずれの手続でも利用することができます。
普通は住宅ローンを抱えている人には、住宅そのものに抵当権がつけられ、ローンの返済が難しくなった際、抵当権者は住宅を競売にかけて先に支払いを受け取ることができますが、そのケースでは、債務者は立ち退きを求められることになります。
しかし、この民事再生の住宅ローン特則を再生計画に盛り込むことで、競売を延期してもらったり、ローン返済期間を延長してもらうことで、住宅を手放すことなくローンを返済し続けながら再生を進めることが可能となります。
この場合、住宅ローン自体の減額や利息の減免はないため、他の借金を減らしてローン支払いを継続することになります。
ただし、延長の上限は10年であり、かつ最終支払いは70歳を超えることはできません。
尚、この特則の活用については、債権者の同意は必要ありません。
■店舗兼自宅の場合も可能
また、個人事業主で住宅を店舗兼用にしている場合も、床面積の半分以上が住居である場合には、この特則を利用することができます。
ただし、住宅に住宅ローン以外の抵当権がついている場合はこの特則を利用することはできません。
【住宅ローン特則を利用した民事再生手続きの流れ】
1.事前準備・専門家相談
・再生手続きの全体像、要件、リスクを把握する
・民事再生に精通した弁護士・司法書士を選任する
・金融機関(住宅ローン債権者)との関係性、残債務額、返済状況を整理する
・家計収支、資産・負債一覧、収入証明書類を準備する
2.申立書の作成・裁判所への提出
①申立書に「住宅資金貸付債権特則適用申立」の旨を明記
➁住宅ローン契約書の写し・抹消予定証明(登記事項証明書)を添付
③収入状況や家計収支表、債権者一覧表をまとめる
④管轄の地方裁判所(民事再生担当部)に提出
3.受任通知の送付
・弁護士・司法書士が申し立てと同時に、住宅ローン債権者宛てへ受任通知を送付
・他の債権者にも同様の通知を行い、直接の返済停止(モラトリアム)を図る
4.再生計画案の作成と特則マーク
・住宅ローンは対象外として記載
・他の債権(消費者ローン、カードローン、事業債務など)を圧縮率や分割回数で整理
・最長5年以内の分割返済計画を具体化
・計画表には「住宅ローンについては○年○月まで通常返済を継続」と明記
5.債権者集会・認可決定
・裁判所が関係債権者に計画案を送付
・債権者集会で合議、過半数の賛成を得られれば裁判所が認可決定
・住宅ローン債権者は計画外扱いとなり、従前の契約に基づき返済を継続
6.再生計画の履行
・住宅ローン:金融機関へ従前どおり月々返済
・他債務:再生計画に沿って分割返済(遅延リスクがないよう振込管理を徹底)
・トラブル防止のため、定期的に担当弁護士・司法書士と進捗を共有