サラ金で借りたお金が残り少なくなってきた頃、見計らったように「借金増額の案内状」がポストに舞い込みました。
それを受け取った時、心が揺れたのを覚えています。案内状の紙面は温和な雰囲気で、魅力的な金利や利便性が謳われており、少し躊躇しましたが、心の中で「少しだけ借りるなら大丈夫、、、」と思い直し、増額を申し込んでしまいました。
後日、新たに借金したお金が口座に振り込まれ、(借入残高が増えたにもかかわらず)私はホッと安堵していました。
この頃はまだ、借金返済の不安を感じることも無く、これから「自分に降りかかってくる苦境」を想像もせず、徐々に分不相応な散財が増えていきました。
そして、サラ金A社の返済が厳しくなると、金利の低いB社で借り換え、当面の返済に充てた後、生活費を補うために再度A社で借入し、「借り換えでリセットした」という感覚が生まれ、結果的に総借入額は増え続けました。
そんな訳で、繰り返し借金を重ねるうち、毎月使えるお金の限度額を自分で把握出来なくなって「使っても減らない」という錯覚に陥ってしまったのです。
債務という事実そのものが「いつものこと」に変わってしまい、どんどん借入スピードが上がっても何も感じなくなり、たまに返済の事が頭をよぎりましたが、私の仕事が営業だったので「借りた分だけ大きく稼げばいい」と気を取り直し、返済日までに頑張ればなんとかなるだろうと安易に考えていました。
【現在バイアス】
経済学と心理学が融合した「行動経済学」における心理的な傾向で「目の前の利益」を過大評価し、未来の利益を軽視してしまうことを指します。
現在バイアスが強い人ほど、「今すぐ必要な10万円」と「1年後に手に入る10万円」を比較したとき、借入金利が高くても即時入手を選びやすいことが明らかになっています。
このため、クレジットカードのリボ払いや消費者金融の高金利ローンといった高コストな借り入れが増え、累積債務のリスクが上昇してしまう訳です。