ビットコインと自己破産の関係

思わぬ落とし穴

ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)は、いまや株やFXと並ぶ投資手段として広く知られるようになりました。
値動きの激しさから短期で利益を狙う人もいれば、長期的な値上がりを期待してコツコツ買い増している人もいるでしょう。

一方で、レバレッジ取引や多額の借金をしてまでビットコインに投資し、その結果、返済ができなくなり自己破産を検討せざるを得ない人も増えています。
ここでは、ビットコインと自己破産の関係を、「破産手続きでどう扱われるのか」「隠したらどうなるのか」「損失は免責に影響するのか」などの観点から整理して解説します。

1. 自己破産ではビットコインも「れっきとした財産」
自己破産は、「支払いきれない借金をゼロにして、生活を立て直すための制度」です。
その代わり、持っている財産の多くは換金され、債権者(お金を貸している側)への返済に充てられます。
ここで重要なのが、「何が財産に含まれるのか」という点です。
日本では、ビットコインなどの暗号資産は法律上「財産的価値のあるもの」として扱われており、現金や預貯金、不動産、株式と同じように、破産手続きの対象になります。

例:ビットコイン保有分も申告が必要
例えば、Xさんが以下のような状況で自己破産を申し立てるとします。
・借金総額:300万円
・銀行預金:20万円
・ビットコイン:時価80万円分保有

この場合、自己破産の申立書には、預金20万円だけでなく、保有しているビットコイン80万円分も必ず記載しなければなりません。
「暗号資産だからバレないだろう」と考えて申告しなかった場合、後で大きな問題になります(後述)。

2. 「匿名だから隠せる」は危険な誤解
ビットコインについてよく語られる特徴のひとつが「匿名性」です。
このため、「ウォレットアドレスさえ知られなければ、自己破産のときにビットコインを申告しなくてもわからないのでは?」と思う人もいます。
しかし、現在の自己破産の実務では、ビットコインを完全に隠し通すことはかなり難しくなっています。
追跡されるルートは複数ある
・国内取引所は、本人確認(KYC)をした上で口座が開設されている
・裁判所や破産管財人は、銀行口座の入出金履歴を詳細にチェックする
・取引所に対して、取引履歴の照会が行われることもある

これらを組み合わせれば、「どのくらい日本円を取引所に入金したか」「どのタイミングでビットコインを購入したか」「どこに送金したか」などがかなり具体的に把握されます。

例:友人名義ウォレットに移してもアウトになりうる
Yさんは、借金返済が行き詰まり、自己破産を検討していました。
自己破産を申立てる前に、保有していたビットコイン50万円分を、信頼している友人のウォレットに移し、「自分はビットコインを持っていない」と申告しました。
ところが破産管財人が、Yさんの銀行口座を調べる過程で、国内取引所への多額の入金履歴を発見。
取引所から開示されたデータにより、
・いつ、いくらビットコインを購入したか
・その後、どのアドレスへ送金されたか

が明らかになり、ビットコインを意図的に隠そうとした事実が判明しました。
このようなケースでは、「財産隠し(破産財団を不当に減らそうとした行為)」と評価され、自己破産の手続き自体には入れても、「免責(借金をゼロにする許可)」が認められないおそれがあります。

3. ビットコインの価格変動と破産手続き
ビットコインの特徴として、「短期間で価値が大きく動く」という点があります。
自己破産の手続き中も例外ではなく、申立て時点と換金時点とで価格がまったく違うことも珍しくありません。

例:破産手続き中にビットコインの価格が高騰した場合
Zさんは、自己破産を申し立てた時点で、時価で30万円相当のビットコインを保有していました。
裁判所に申告した後、破産管財人がビットコインを売却しようとしたところ、その間に価格が急上昇し、売却時には100万円相当の価値になっていました。
このとき、
・売却時点の100万円が破産財団(債権者に配当する財産)に組み込まれ、
・借金の返済に充てられます。

つまり、「申立てたときに30万円だったから、30万円だけが対象」という考え方はされず、手続き中に増えた分も含めて、原則としてすべて債権者のために処分されます。

4. ビットコインでの損失は免責に影響するのか
「ビットコイン投資で大失敗して借金が膨らみ、返済ができない。自己破産すれば借金は帳消しになるのか?」
ここで重要になるのが、「借金の原因」と「投資の仕方」です。
自己破産をした人が借金から解放されるには、「免責許可決定」を得る必要があります。
しかし、以下のような行為が原因で借金が増えた場合、免責が認められない(免責不許可)と判断される可能性があります。
・過度な投機行為
・明らかに収入に見合わない借入による投資
・ギャンブル的な暗号資産取引を繰り返した場合
 など

例1:借金してまでビットコインに突っ込み続けたケース
Aさんは、年収300万円ほどにもかかわらず、複数のカードローンや消費者金融から合計500万円を借りてビットコイン投資を行っていました。
価格が下がっても「そのうち上がるはず」と考え、さらに借金を重ねて買い増しを続けた結果、相場の急落でほとんどが消失。
利息の支払いもできなくなり、自己破産を申し立てます。
このような場合、
・収入に対してあまりにも過大な借金をしている
・投資というより、ギャンブル的な行動の連続と見なされやすい

といった理由から、裁判所が「浪費や過度な投機にあたる」と判断し、免責不許可のリスクが高まります。

例2:生活状況や投資額が比較的妥当なケース
一方で、Bさんは、余裕資金の範囲でビットコインを購入していました。
しかし、相場急落によって損失が出た後、収入の減少や他の借金も重なり、結果的に返済が困難となって自己破産を検討することに。
このケースでは、
・投資額が年収や生活水準に比べて極端ではない
・借金のすべてがビットコイン投資に起因しているわけではない

といった事情があれば、「一概に免責を認めない」とはされず、裁判所は個々の事情を総合的に考慮します。
実際の運用でも、「暗号資産に手を出したから即アウト」というものではなく、「どの程度の無理をしていたのか」「どんな経緯でここまで借金が膨らんだのか」が重視されます。

5. ビットコインと自己破産をめぐる注意点
ここまでの内容を踏まえて、ビットコインと自己破産について押さえておきたいポイントを整理します。
1. ビットコインは破産手続きで「財産」として扱われる
預金や株式と同じく、保有している暗号資産はすべて申告の対象です。
2. 隠したり、他人名義に移したりするのは極めて危険
取引所や銀行口座の履歴から追跡され、「財産隠し」とみなされれば、免責が認められない可能性があります。
3. 価格変動の利益も債権者への返済に充てられる
破産手続き中にビットコインの価格が上がった場合も、その増加分を含めて換金されます。
4. ビットコインの損失があるからといって、必ず免責NGになるわけではない
借金の規模、収入とのバランス、投資の経緯などによって判断が変わります。「投機性の強い取引を繰り返したかどうか」が重要です。
5. 借金が膨らむ前に、早めに相談することが大切
返済に困り始めた段階で弁護士や司法書士に相談すれば、自己破産以外の選択肢(任意整理・個人再生など)が取れることも多く、ダメージを最小限に抑えやすくなります。

6. 借金とビットコインで悩んだときの一歩
ビットコインやその他の暗号資産は、高いリターンが期待できる一方で、相場の変動によっては、借金を抱え生活が追い込まれる危険もあります。
そして、いざ自己破産となれば、「隠せる資産」ではなく、「厳しくチェックされる財産」として扱われます。
もし、
・ビットコイン投資による損失で借金が増えてしまった
・返済のために新たな借入をするようになってしまった
・この先、支払いの見通しが立たない

といった状況にあるなら、一人で抱え込まず、早めに弁護士などの法律の専門家へ相談することが重要です。
自己破産を含め、どの手続きが適切なのか、ビットコインをどう扱うべきか、といった点について、具体的なアドバイスを受けることができます。

ビットコインと上手に付き合うためにも、「もし失敗したらどうなるのか」「借金が返せなくなったときにどんな制度があるのか」を知っておくことは、リスク管理の一部といえます。
 

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