借金に苦しむ人が増える社会の背景

思わぬ落とし穴

借金に追い込まれる人が増えている「社会背景」とは

「どう頑張ってもお金が足りない」「気づいたら借金が膨らんでいた」。こうした声は、もはや一部の人だけのものではありません。
いまの日本では、個人の浪費や努力不足だけでは説明できないレベルで、借金に追い込まれる人が増えています。その根本には、社会全体の構造的な変化があります。

1. 生活コストだけが上昇し、収入は置き去りにされている
ここ十数年、生活に必要なものの値段は着実に上がってきました。
・食料品・日用品の値上げラッシュ
・電気・ガスなどエネルギー価格の高騰
・物流コストの上昇に伴うあらゆる商品の値上がり
一方で、多くの人の手取り収入はほとんど変わっていません。
むしろ、
・実質賃金の低下
・非正規雇用比率の増加
・地方と都市部の賃金格差の固定化

によって、「頑張って働いても生活がギリギリ、もしくは赤字」という世帯が増えています。
足りない分を埋めるために、クレジットカードのリボ払いや、カードローン、後払いサービスなどの借金に頼らざるを得ない状況が日常化しているのです。

2. 固定費という「毎月の重し」が、家計をじわじわ圧迫している
かつての日本では、節約しようと思えばある程度支出を削ることができました。
しかし今は、「そもそも削りにくいお金=固定費」が家計の大半を占めています。
例えば、
・スマホ端末代の分割払い+高水準の通信費
・動画・音楽・クラウドサービスなどのサブスクリプション契約
・生命保険・医療保険などの保険料
・高止まりする都市部の家賃
・上昇を続ける電気・ガス料金
といった「毎月必ず出ていくお金」が膨らんでいる状態です。
収入が少し減ったり、残業が減ったり、病気で休職したりすると、すぐに家計が破綻しかねない。
「節約すれば乗り切れる」という昔ながらの発想が通用しにくくなり、生活の土台そのものが借金に近づきやすい構造になっています。

3. キャッシュレス・後払いの拡大で、“借金の感覚”が麻痺していく
現代の借金は、いわゆる消費者金融だけではありません。
・Pay系・コード決済のあと払い機能
・フリマアプリ・ショッピングサイトの後払い決済
・スマホや家電の分割払い
・サブスクのクレジットカード引き落とし
こうした仕組みは、カードを出したり契約書にサインしたりという「借りるぞ」という心理的ハードルがほとんどありません。
その結果、
・自分がどれだけ借金しているのか把握しづらい
・小さな支払いが複数サービスで積み重なり、総額が見えにくい
・気づいた時には返済額が収入を圧迫している

という状態に陥りやすくなります。
借金が、生活の中に自然に溶け込んでしまったことで、「いつの間にか多重債務になっていた」というケースが増えているのです。

4. 家族や地域の支えが弱まり、「借金以外の選択肢」が見えなくなっている
以前の日本社会には、「お金に困ったときは、とりあえず誰かに相談できる」という土壌がありました。
・親やきょうだいと同居、あるいは近居している
・近所付き合いがあり、日常的な助け合いがあった
・地域の商店や知人が、ツケ払いなどで一時的に助けてくれた
ところが今は、
・単身世帯の増加や核家族化
・転勤・転職による地縁・血縁からの切り離され
・親世代自体が経済的に余裕を失っている

といった変化によって、「身近なセーフティネット」が大きく弱まっています。
その結果、「相談できる人がいない」「一時的に助けてくれる相手がいない」と感じる人が増え、最後の選択肢として借金に頼らざるを得なくなっているのです。

5. 「お金に困るのは自己責任」という空気が、相談を遠ざけている
日本には、借金や貧困、生活苦に対して強い「恥」の感覚があります。
・借金=だらしない
・生活苦=努力不足
・福祉の利用=甘え
こうした偏見が、メディアやSNSの中で繰り返し語られることで、「お金の悩みを他人に話すこと自体が悪いこと」のように感じさせてしまいます。
そのため、
・家計が苦しくなっても誰にも相談しない
・返済がきつくなってからも、しばらく我慢してしまう
・法的な救済制度や公的支援を知らないまま、限界まで借り続ける

といった「孤立した借金問題」が拡大しやすい社会背景ができあがっています。
早い段階であれば、債務整理や生活保護、各種公的支援など、使える制度は数多く存在するにもかかわらず、「恥」の感情がそれらへのアクセスを妨げているのです。

6. 若い世代にとって、「人生のスタート」がすでに借金から始まっている
特に深刻なのが、若年層にのしかかる構造的な負担です。
・上昇し続ける大学・専門学校の学費
・実質的に“借金”として返済義務がある奨学金制度
・新卒の初任給の伸び悩み
・正社員になれず、不安定な雇用に置かれる若者の増加

結果として、社会人としてのスタート時点から数百万円単位の借金を抱え、その返済を続けながら低賃金で働く若者が少なくありません。
さらに、
・車や住宅の購入が難しく、資産形成に踏み出せない
・結婚・出産・子育てに必要なコストが高く、将来設計が描きにくい
といった事情も重なり、「未来への投資」をしたくても、それ自体が新たな借金リスクになってしまう社会になっています。

7. 借金問題は「個人の甘さ」ではなく、社会構造の問題
ここまで見てきたように、いま日本で借金に苦しむ人が増えているのは、
・物価だけが上がり、賃金が追いつかない
・高額化した固定費が家計を圧迫する
・後払い・キャッシュレスが借金の自覚を薄める
・家族・地域のセーフティネットが弱体化した
・自己責任論によって相談が遅れがち
・若者がスタートラインから借金を背負わされている
といった「社会背景」が複雑に絡み合っているからです。

つまり、「借金に苦しむ人が増えたのは、その人の性格や計画性の問題だ」と片づけることはできません。
私たちが生きている社会そのものが、「借金に陥りやすい構造」へと変化してきた結果だと言えます。

借金を個人の問題として責めるのではなく、
・なぜ借金に追い込まれたのか
・どんな社会的要因が背後にあるのか
・どのような支援や制度が必要なのか

を冷静に見つめ直すことが、これからの日本社会に求められています。
 

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