不吉な予兆

奈落のいきさつ
奈落のいきさつ ①

昔、飛び込みの訪問営業(事前にアポを取らずに一軒一軒しらみつぶしに訪問していく営業手法)をしていた時期があり、毎日100件以上の訪問を行って、断られるたびに落ち込んだり、成果がない時には悔しさがつのる毎日でした。

この仕事は大きなプレッシャーとストレスを伴っていたため、唯一の楽しみは帰り際に同僚と居酒屋で一杯やることでした。
仕事の愚痴や喜びを語り合い、お互いの苦労を共有することで、日常のストレスから解放される貴重な時間でしたが、
次第に財布の中身が減り、毎回の飲み代を工面するのが難しくなってきました。
普通なら次の給料日まで我慢するところですが、その日まで待ちきれそうもない私は飲み代を捻出する方法を必死に考えました。

そこで、思いついたのが、生命保険の前借だったのです。
正式には「契約者貸付制度」と呼ばれる仕組みで、生命保険を解約せずに、解約返戻金の一部を借りることができる便利な制度です。
この方法の利点は、手続きが簡単な上に低金利で返済期限も無いことです。
すぐさま保険証券と印鑑などを持参して、生命保険の窓口へ行きお金を借りたのです。

懐が温かくなって安堵した私は、早速、仕事の帰り際に同僚と一杯やることにしました。
しかし、働かずにお金を手にした初めての体験が、後に正常な金銭感覚を失わせて行き、奈落の底に突き落とされることになるのを、この時はまだ知る由もなかったのです。

 

追 記

契約者貸付制度について
契約者貸付制度は、生命保険の解約返戻金の一定範囲内で利用できる仕組みで、予測不可能な費用が生じた際、一時的な資金源として非常に便利な制度ですが、利息が毎年元金に繰り入れられますので、返済期限が定められていないからといって借りたままにしていると、元利合計は年々増えていきます。
貸付の元利合計が解約返戻金の額を超えると、保険契約は失効しますので特に注意が必要です。

 

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