任意整理では「どれだけ減らせるか」だけでなく、「本当に最後まで払っていけるか」という返済能力が非常に重要になります。
弁護士や司法書士が債権者(消費者金融やクレジットカード会社など)と交渉する際も、「この人ならこの金額をきちんと返済していける」と判断してもらえなければ、任意整理の条件がまとまりにくくなってしまうからです。
1. 任意整理における「返済能力」とは?
任意整理は、将来利息のカットや毎月の返済額の軽減を目指す手続きですが、「減らしたうえで残る元金を完済できる見込みがあるか」が前提となります。
言い換えると、以下のような条件を満たせる人が、「返済能力がある」と判断されやすいです。
・安定した収入が見込める
・生活費を払ったあとに返済に回せるお金が残る
・数年以内に完済できる現実的なプランが立てられる
この3つを軸に、具体的なポイントを見ていきましょう。
2. 安定した収入があるかどうか
任意整理はあくまで「返済していくこと」を前提とした借金整理です。
そのため「毎月ある程度決まった収入があるかどうか」は、返済能力の判断材料として非常に重視されます。
会社員・公務員・年金受給者など
・正社員や公務員で、毎月の給料が安定している人
・厚生年金や国民年金など、定期的に年金収入がある高齢者
これらの人は、収入の見通しが立てやすいため、返済能力ありと判断されやすくなります。
たとえば、月収20万円の会社員で、任意整理後の返済額が毎月2万円程度であれば、他の支出とバランスを見ながら無理なく返済できる可能性があります。
収入が不安定な場合でも可能性はある
フリーランスや歩合給の営業職など、収入に波がある人でも、
・過去数ヶ月〜1年程度の平均収入
・今後の契約状況や売上の見込み
などをもとに、返済能力を判断されることがあります。
「毎月必ず同じ額」とまではいかなくても、「おおむねこのくらいは稼げている」というラインが説明できるかがポイントです。
3. 生活費を引いても返済に回せるお金が残るか
収入があっても、家賃・食費・光熱費などの生活費だけで手一杯では、借金の返済にお金を回せません。
任意整理では、**「生活を維持したうえで、どれだけ返済に使えるか」**を現実的に計算します。
具体的なイメージ
たとえば、
・月収:18万円
・家賃・光熱費・食費などの生活費:15万円
この場合、残りの3万円が「返済に回せる可能性があるお金」として見られます。
ただし、ここからさらに突発的な出費(医療費、冠婚葬祭など)も考慮し「少し余裕を持った金額設定」をすることが大切です。
弁護士や司法書士に相談すると、家計簿や口座の入出金をもとに、どれくらいなら無理なく返済に回せるか、一緒にシミュレーションしてくれます。
4. パート・アルバイト・派遣でも任意整理はできる?
「正社員でないと任意整理は難しいのでは?」と不安に感じる方も多いですが「パートやアルバイト、派遣社員でも、継続的な収入があれば返済能力ありと判断されることがあります。」
例:アルバイトの場合
・コンビニで週5日勤務、月収12万円
・実家暮らしで生活費が比較的少ない
・手元に残るお金の中から、毎月1万円を返済に充てられる
このような状況なら、借金の総額や任意整理後の返済額にもよりますが、返済計画が成り立つと判断される可能性があります。
大事なのは「雇用形態」そのものではなく、**収入が継続しているか、生活費とのバランスが取れているか**です。
5. 家族の援助や仕送りも「返済能力」に含まれることがある
自分の収入だけでは任意整理後の返済が難しい場合でも、**家族からの援助が継続して見込めるなら、それも返済能力の一部として評価されることがあります。**
例:学生や収入が少ない方の場合
・アルバイトで月収10万円
・親から毎月5万円の仕送り
・合計15万円の中から、学費や生活費を支払いつつ、返済に充てられる金額を確保できるかどうか
このように、第三者からのサポートも含めて返済計画を立てるケースもあります。
もっとも、「毎月いくら援助してもらえるのか」「いつまで続けてもらえるのか」を、家族としっかり話し合っておくことが重要です。口約束だけでなく、可能であれば書面で確認しておくと、交渉もスムーズになります。
6. 「3年〜5年で完済できるか」がひとつの目安
任意整理では「通常3年程度(場合によっては5年程度)で完済できる返済計画」を立てることが多くなります。
この期間内に無理なく支払いを続けられるかどうかが、「現実的な返済能力があるか」を判断する大きなポイントです。
例:借金60万円の場合
・利息をカットしたうえで、残った元金60万円を支払う
・ 月1万7千円ずつ返済していくと、約3年で完済
このように「借金の総額 ÷ 返済期間(月数) = 毎月の返済額」という形で、具体的なシミュレーションが行われます。
ここで計算された毎月の返済額が、生活を圧迫しすぎない金額であれば、「返済計画は現実的」と判断されやすくなります。
7. 任意整理が向かないケース(返済能力が不足しているケース)
以下のような場合は、任意整理だけでは借金問題を解決できない可能性があります。
・収入がほとんどなく、今後も増える見込みがない
・生活保護を受給していて、返済に回せるお金が事実上ない
・収入より借金の額があまりに大きく、3〜5年での完済が現実的ではない
このようなときは、任意整理ではなく「自己破産や個人再生など、別の債務整理手続き」を検討することになります。
どの手続きが適しているかは、収入・資産・家族構成・借金の内容などによって変わるため、専門家に相談して判断するのが安全です。
8. まとめ:任意整理には「返せる道筋」を示すことが必要
任意整理は、借金の負担を軽くし、立て直しのチャンスをつくるための有効な手段です。
しかし、「返済能力」=「返せるだけの現実的な道筋」がなければ、手続きそのものが成り立ちません。
ポイントを整理すると、
・安定した収入がある(正社員でなくてもOK)
・生活費を差し引いても返済に回せるお金が残る
・家族からの援助も含めて、収入の裏付けがある
・3年〜5年程度で完済できる返済計画が立てられる
これらを満たせるかどうかが、任意整理における返済能力の判断基準になります。
借金の返済に行き詰まっている場合でも、「本当に任意整理が可能か」「他の方法のほうがよいのか」は、専門家が家計の状況や借金総額を見ながら一緒に検討してくれます。
一人で抱え込まず、まずは現状の収入・支出を書き出して、「自分にはどのくらいの返済能力があるのか」を把握することから始めてみてください。