借金の整理方法を調べていると、「個人再生には資格制限がない」という説明をよく目にします。
これは、自己破産と個人再生の違いを理解するうえで、とても重要なポイントです。
ここでは、
・そもそも「資格制限」とは何か
・なぜ個人再生には資格制限がないと言われるのか
・どんな人に個人再生が向いているのか
などを、具体例も交えながら整理していきます。
「資格制限」とはどういうものか
「資格制限」とは、法律上の手続き(主に自己破産)を行うことで、一定期間、特定の職業や資格に就けなかったり、仕事を続けられなかったりする制限のことです。
代表的な例としては、自己破産をすると、破産手続きが終わるまでの間、次のような職業に就くことができなくなります。
・弁護士
・税理士
・司法書士
・警備員
・保険外交員
・一部の公務員や会社役員 など
すでにこうした職業についている人が自己破産をすると、「仕事を辞めざるを得ない」「登録が一時的に停止される」といった不利益が生じる可能性があります。
これが、借金問題で自己破産を選ぶ際の大きなデメリットといえます。
個人再生には資格制限がない理由
個人再生も、借金の返済負担を大きく減らすための法的な手続きですが、自己破産とは性質が異なります。
自己破産:原則として、借金の返済義務をゼロに近い状態まで免除してもらう手続き
個人再生:借金を大幅に減額してもらったうえで、原則3〜5年かけて返済していく手続き
個人再生は、「返せる範囲で責任を果たしながら生活を立て直す」という考え方に基づいているため、職業や資格に対するペナルティ(資格制限)が基本的に設けられていません。
そのため、
・個人再生をしても、弁護士や税理士、警備員、保険外交員などの仕事を辞める必要はない
・資格の登録が停止されるといったことも通常はない
といった点が、「個人再生は資格制限がない」という表現につながっています。
具体例:資格を守りながら借金を整理したケース
【保険外交員として働くBさんの場合】
Bさんは、保険会社に勤務する保険外交員。
営業成績は順調でしたが、親の介護費用や生活費の不足を補うためにカードローンを重ね、気づいたら毎月の返済が追いつかないほど借金が膨らんでしまいました。
最初は自己破産も考えましたが、自己破産をすると保険外交員としての登録や業務に支障が出る可能性があり、「仕事を失うかもしれない」という不安が大きく、簡単には決断できませんでした。
そこで弁護士に相談したところ、
「安定した収入があり、一定額を返済に回せるのであれば、個人再生であれば資格制限を受けずに借金を減らせる可能性が高い」とアドバイスを受け、個人再生の申立てを選択しました。
個人再生により借金総額は大きく減り、残りは3年間の分割で返済していく計画が裁判所に認可されました。
Bさんは今も保険外交員として働き続けながら、計画通りに返済を進めています。収入は維持できているため、生活も徐々に安定し、将来への不安も軽くなったそうです。
個人再生が向いている人の特徴
資格制限がないこと以外にも、個人再生にはさまざまな特徴があります。
とくに次のような人に向いている手続きといえます。
・弁護士、税理士などの士業、公務員、警備員、保険外交員など
「資格や職業を失いたくない人」
・毎月ある程度の安定した収入があり、3〜5年であれば返済計画を立てられる人
・自己破産には心理的な抵抗があるが、借金の負担を大きく減らしたい人
・住宅ローンがあり、できれば自宅を手放したくない人(住宅ローン特則が利用できる場合)
「仕事は続けたい」「資格は守りたい」
そんな人にとって、個人再生は現実的で心強い選択肢になります。
「働きながら立て直す」ための制度として
借金の問題というと、「人生の終わり」「再起不能」といった重いイメージを抱きがちです。
しかし、個人再生のように、今の仕事を続けながら生活再建を目指せる制度も、法律の中にはきちんと用意されています。
もちろん、個人再生がすべての人にとってベストとは限りません。
借金の額、収入の状況、守りたい財産や資格の有無によって、自己破産が適している場合もあれば、任意整理で十分な場合もあります。
大切なのは、「もうダメだ」と一人で抱え込まずに、早い段階で弁護士などの専門家に相談し、自分に合った解決方法を選ぶことです。
人生の流れは、時に大きく曲がり、予定外の出来事も起こります。それでも、適切な手続きを踏めば、借金に追われる生活から抜け出し、また前を向いて進んでいくことは十分に可能です。
個人再生は、「資格や仕事を守りながら借金を整理したい」という方にとって、その一歩を支えてくれる有力な手段のひとつです。