特定調停のデメリットとは?借金問題で失敗しないために知っておきたいポイントと具体例
借金の返済が苦しくなったとき、「自己破産は避けたいから、まずは特定調停で…」と考える人は少なくありません。
特定調停は、裁判所が間に入り、債権者と話し合いながら返済条件を見直していく手続きで、うまくいけば毎月の返済額を減らせる有効な方法です。
しかし、メリットばかりを見て安易に申し立ててしまうと、「想像以上に負担が大きかった」「結局ほかの債務整理を選ぶことになった」という事態になりかねません。
ここでは、特定調停のデメリットを、実際に起こりうる具体例を交えながら解説します。
1. 手続きの負担が意外と重い
特定調停は「自分でできる」「費用が安い」と紹介されることが多い一方で、実際には次のような負担が生じます。
・申立書や家計の状況を示す書類の作成
・借入先ごとの残高や金利、返済履歴の整理
・指定された期日に裁判所へ出頭
・調停委員との面談や説明
とくに会社員やパート勤務の人は、平日に裁判所へ行かなければならないケースが多く、仕事との両立が課題になります。
【具体例】
会社員のAさんは、消費者金融やカードローンの借金を整理するため特定調停を申し立てました。
しかし、期日が平日の昼間に指定されることが多く、毎回有給を取得する必要がありました。
部署の人手も足りない時期だったため、上司からは「また休むの?」と言われ、精神的なストレスも増えたそうです。
手続きそのものは「自分でできる程度」ではあるものの、書類づくりや裁判所への通院に時間と労力を取られる点は、特定調停ならではのデメリットといえます。
2. 債権者が協議に応じなければ成立しない
特定調停は、裁判所を利用するといっても、強制的に借金を減らしたり、債権者の同意なしに返済条件を変えたりできる手続きではありません。
あくまで「話し合いによる解決」が前提であり、債権者が歩み寄らなければ調停は成立しない可能性があります。
【具体例】
Bさんは複数社から借金をしており、返済額が月収の半分近くになっていました。自己破産は避けたかったため、まずは特定調停を利用することに。
ところが、3社のうち1社が「減額や将来利息カットには一切応じない」と主張し、調停は不成立に。結果的に支払いのメドが立たず、最終的には自己破産を申し立てることになりました。
このように、すべての債権者が柔軟に対応してくれるとは限らないため、「申し立てれば必ず借金が軽くなる」とは考えない方が安全です。
3. 信用情報に傷がつき、しばらくは新たな借入れが難しくなる
特定調停は、任意整理や自己破産と同様、「債務整理」の一種として扱われます。
そのため、調停が成立すると、信用情報機関に事故情報(いわゆるブラック情報)が登録されるのが一般的です。
登録されている期間は、新しいクレジットカードの発行やローンの審査が厳しくなります。
「借金を整理したい」という人にとっては当然の結果でも、将来の住宅ローンや車のローンを予定している人にとっては大きなデメリットです。
【具体例】
Cさんは、特定調停で毎月の返済額を減らしてもらい、なんとか完済に向けて返済を続けていました。
しかし転勤のため車が必要になり、自動車ローンの申し込みをしたところ、信用情報に特定調停の記録が残っていたため審査に落ちてしまいました。結局、現金一括での購入は難しく、通勤手段の確保に苦労したそうです。
「特定調停ならブラックにならない」と誤解している人もいますが、実際には他の債務整理と同様に信用情報への影響がある点に注意が必要です。
4. 専門家をつけないと交渉面で不利になることも
特定調停は、原則として本人が自分で申し立て、手続きを進めることができます。
弁護士や司法書士に依頼しなければならない決まりはありませんが、法律や金融の知識がないまま対応すると、結果的に不利な条件で合意してしまうリスクがあります。
・将来利息のカットや返済期間の延長について、どこまで交渉してよいのかわからない
・調停委員の提案が、自分にとって本当に妥当なのか判断できない
・家計の状況をうまく説明できず、「このくらいなら払えるだろう」と高めの返済額でまとまってしまう
【具体例】
Dさんは弁護士費用を節約したくて、特定調停をすべて自分で行いました。
ところが、調停委員とのやり取りでは借金の仕組みや利息制限法の知識が求められる場面も多く、うまく説明ができませんでした。結果として、将来利息の一部のみカット、返済期間もあまり伸ばせず、毎月の返済額はほとんど変わらない条件で調停が成立してしまいました。
弁護士に依頼すれば、交渉や書類作成を任せられて安心ですが、そのぶん着手金や報酬がかかります。
「費用を抑えたいから特定調停にしたのに、結局弁護士費用も必要になった」というケースもあり得るため、この点もデメリットとして理解しておきましょう。
5. 原則として、すべての債権者を対象にする必要がある
特定調停では、「都合の悪い貸金業者だけを外す」「住宅ローンはそのまま、カードローンだけを対象にする」といった選び方が、原則としてできません。
借金の全体像を踏まえて返済計画を立てる手続きであるため、基本的にはすべての債権者を対象にすることが求められます。
【具体例】
Eさんは、消費者金融からの高金利の借金だけが負担になっており、マイホームの住宅ローンはこれまで通り支払っていきたいと考えていました。
しかし、特定調停の説明を受けると、「住宅ローンの債権者も含めて手続きを進める必要がある」と言われ、今後の住宅ローンへの影響を不安に感じて申し立てを断念しました。
このように、「一部の借金だけを整理したい」「住宅ローンや自動車ローンは守りたい」という人にとっては、特定調停はかえって使いにくい制度となることがあります。
6. 返済計画が破綻すると、結局ほかの債務整理に進むことも
特定調停が成立しても、それはあくまで「今後、この条件で返済していきます」という約束にすぎません。
収入が減ったり、予想外の出費が増えたりして再び返済が苦しくなると、調停で決めた約束を守れなくなり、再度の督促や一括請求に発展する可能性があります。
この場合、最終的には任意整理のやり直しや個人再生、自己破産といった別の債務整理を選ばざるを得なくなるケースも少なくありません。
そうなると、「時間と労力をかけて特定調停をしたのに、結局やり直し」という二重の負担が生じてしまいます。
まとめ:特定調停のデメリットを踏まえて、自分に合う解決策を選ぶ
特定調停は、借金問題を裁判所を通じて話し合いで解決する有力な手段ですが、次のようなデメリットもあります。
・手続きや裁判所への出頭など、時間と労力の負担が大きい
・債権者が応じなければ調停が成立せず、別の債務整理が必要になることもある
・信用情報に事故情報が登録され、しばらく新たな借入れやクレジットカードが使いにくくなる
・専門家をつけないと交渉面で不利になり、十分な減額が得られない可能性がある
・原則としてすべての債権者が対象となり、一部の借金だけを整理したい人には向かない
・調停後の返済が続けられないと、手続きをやり直す負担が生じる
借金の状況や収入、守りたい財産(住宅や車など)、家族構成によって、最適な解決方法は人それぞれです。
特定調停だけにこだわらず、任意整理・個人再生・自己破産といった他の選択肢とも比較しながら検討することが重要です。
自分だけで判断するのが不安な場合には、法テラスの無料相談や、債務整理に詳しい弁護士・司法書士に早めに相談し、特定調停のメリット・デメリットを踏まえて、無理のない解決策を一緒に考えてもらうとよいでしょう。