昔のサラ金と今の借金の構造の違い

思わぬ落とし穴

昔と今で、「借金の危なさ」はまったく姿を変えた

1990〜2000年代のサラ金(消費者金融)と、2020年代の借金環境は、表面上は同じ「お金を借りる行為」でも、構造もリスクの出方も別物です。
昔は「どこのサラ金から借りるか」が問題でしたが、今は「気づかないうちに、どれだけ借金が積み上がっているか」が本質的なリスクになっています。

1. 昔のサラ金:わかりやすい「高金利地獄」
1-1. 典型的なサラ金のスタイル
1990〜2000年代前半の消費者金融は、いわば「正面から襲ってくるタイプの借金」でした。
・年利約29.2%という超高金利が一般的
・収入に対して明らかに多すぎる額まで貸す「過剰貸付」
・返済が遅れれば、執拗な電話や自宅・職場への連絡など、プレッシャーの強い取り立て
・返済のために別のサラ金から借りる多重債務が大量発生
「借りては返し、その返済のためにまた借りる」という自転車操業が日常化し、借金が生活を完全に支配する人が多く生まれました。

1-2. なぜ借金が膨れあがったのか
当時のサラ金の一番の特徴は、「借金が増えている自覚はあっても、止められない構造」にありました。
・高金利のため、毎月返しても返しても元本がなかなか減らない
・取り立ての恐怖から、「とりあえずどこかで借りて払う」という悪循環
・手持ちの現金は常に不足し、生活費まで借金頼みになる
リスクは「目に見える」ものでしたが、それでも多くの人が逃げられなくなり、生活破綻・自己破産が社会問題化しました。

1-3. 法改正で「サラ金の暴走」はブレーキがかかった
こうした状況が行き過ぎた結果、2006年の貸金業法改正で
・上限金利の引き下げ
・総量規制(年収の3分の1を超える貸付の原則禁止)
が導入され、旧来型の高金利サラ金は大きく縮小しました。
表向きには、「サラ金=わかりやすい危険な借金」の時代は終わったように見えます。

2. 今の借金:サイレントに積もる「見えない負債」
ただし、借金そのものがなくなったわけではありません。
むしろ現在は、「サラ金ほどの高金利ではない代わりに、自覚がないまま静かに深刻化していく借金」が増えています。
キーワードは「生活に溶け込んだ後払い」と「サイレント多重債務」です。
2-1. 後払い決済(BNPL)による「サイレント多重債務」
最近急増しているのが、「あと払い」やBNPL(Buy Now, Pay Later)と呼ばれる仕組みです。
・PayPayあと払い
・メルペイあと払い
・楽天ペイ後払い
・Amazon後払い
・バンドルカード など
これらは、クレジットカードよりも気軽に使え、「借金」という意識がほとんどないまま利用されるのが特徴です。
特徴とリスク
・少額から使えるため、心理的ハードルが極めて低い
・複数サービスを同時利用すると、合計残高が把握しづらい
・気づいた時には、数万円〜数十万円の借金になっていることも
・延滞すると、一気に債権回収や遅延損害金が発生する場合もある
昔のサラ金と違い、「怖い取り立て」が前面に出てこないため、危険性が見えにくい一方、発覚したときにはすでに状況が深刻化しているケースが増えています。
これが、現代版の「サイレント」な多重債務です。

2-2. 銀行カードローン:低金利でも「借りすぎるワナ」
消費者金融に比べてイメージが良く、「安全そう」に見えるのが銀行カードローンです。
・金利はサラ金より低い(ただし決して「安い」とは言い切れない水準)
・50〜300万円といった高額の利用枠が設定されやすい
・口座から自動引き落としされるため、支払いの痛みが感じにくい
その結果、
・生活費の足りない月に、少しずつ借り足す
・返済額は最低額に抑え、借入残高だけじわじわ増える
・気づいたら長期の借金になり、総返済額が大きく膨らむ
といった形で、表面上は「破滅的ではないけれど、静かに家計をむしばむ借金」になりがちです。

2-3. スマホ・サブスク・公共料金の「隠れ借金化」
今の時代、借金は「金融商品」だけで発生するものではありません。
・スマホ端末代の分割払い
・動画配信・音楽配信などサブスクの月額課金
・電気・ガス・水道・通信費の後払い
・延滞した料金の分割払い
これらは、本人の感覚としては「借金をしている」という意識がほぼゼロのまま進みます。
ところが、
・滞納が続くと、信用情報に登録(いわゆる“ブラック”)される
・将来、クレジットカードやローンの審査に通らなくなる
・携帯電話の分割購入ができなくなる
など、立派な「借金トラブル」として扱われます。
見た目はただの「料金滞納」でも、実態は金融事故と変わらない扱いになる点が、昔との大きな違いです。

2-4. 物価高と低所得で進む「生活費の後払い化」
かつては、サラ金の利用目的として
・ギャンブル
・遊興費
・ブランド品購入
など、ある程度「浪費」としての借金が目立っていました。
しかし今は、状況が一変しています。
・食費や日用品の支払いをクレカやあと払いに依存
・光熱費・通信費を遅らせてなんとかやりくり
・病院代や教育費をカード払いで先送り
といった形で、「生活必需品のための借金」が増えています。
物価高と賃金の伸び悩みが重なり、生活そのものが後払いで成り立つ構造になりつつあるのです。

3. 昔と今の「借金リスク」の本質的な違い
3-1. 昔:攻撃的な借金
昔のサラ金は、
・高金利
・過剰貸付
・目に見える取り立て
といった、わかりやすい「攻めてくる借金」でした。
危険性は認識しやすかった一方、「わかっていても抜けられない」人が多く、社会問題として表面化しました。

3-2. 今:生活に溶け込むサイレントな借金
一方、今の借金は
・金利は昔ほど高くないが、枠や手段が増えた
・「借金をしている」という自覚が薄い
・クレジット・後払い・分割・延滞などが、生活のあちこちに分散
・問題が顕在化するのは「延滞や債権回収が始まってから」
という、「静かに積み上がり、気づいたときには深刻化しているサイレントな借金」です。
サラ金が前面に出てこない分、周囲からも発見されにくく、相談が遅れやすいのも特徴です。

4. まとめ:いま必要なのは「借金の見える化」
昔:サラ金中心で、「危険な借金」は目に見えていた
今:消費者金融・銀行カードローン・後払い・スマホ分割・サブスクなど、借金が生活の細部に分散している
そのため、現在の最大のリスクは
自分がどれだけ借金を抱えているか、本人すら正確に把握していない
ことにあります。
複数のサービスや支払い方法を使っている人ほど、
一度
・毎月の固定支出(サブスク・分割払い・あと払い)を洗い出す
・クレカ・カードローン・後払い残高を一覧化する
・「生活費まで借金で賄っていないか」をチェックする
といった「見える化」をしておくことが重要です。

サラ金の全盛期とは違い、今の借金は静かに、サイレントに家計を侵食します。
自覚のない借金」が深刻化する前に、自分の足元を確認しておくことが、2020年代の借金リスクから身を守る第一歩になっています。
 

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