近年、日本では「後払い(BNPL:Buy Now Pay Later)」が急速に普及し、ひとつの決済手段として定着しつつあります。
2024年時点で、日本のBNPL市場規模は約210億米ドルに達すると見込まれており、ここ数年で存在感が一気に高まりました。
利用者はどれくらい増えているのか?
数年前まで、後払いは一部のネット通販で見かける程度のサービスでした。
ところが、オンラインショッピングの一般化とキャッシュレス決済の拡大に伴い、「クレジットカードの代わりに後払いを選ぶ」という人が急増しています。
市場データを見ると、その勢いは数字にも表れています。
・2024年の日本のBNPL市場規模「約210億米ドル」
・2024年の年間成長率「41.7%」
・2033年の予測市場規模「1,455億米ドル」
10年足らずで市場規模が数倍に膨らむ予測であり、それだけ多くの利用者が後払いを選ぶようになっていることがわかります。
つまり、「一部の人だけが使う支払い方法」から、「一般的な選択肢」へと一気にシフトしている段階にあると言えます。
なぜここまで後払いが広がったのか?
後払いがこれほど伸びている背景には、生活者にとっての「便利さ」が大きく関係しています。
1. スマホだけで完結する手軽さ
Paidyやメルペイの後払い機能など、アプリ上で数ステップ操作するだけで利用できるサービスが増えました。
物理的なカードを発行する必要がなく、オンラインで登録してすぐに使える点が、多くのユーザーに受け入れられています。
2. クレジットカードがなくても利用しやすい
クレジットカードの発行には審査や年齢制限があり、とくに学生や若年層にはハードルが高い面があります。
一方、後払いは審査が比較的簡易で、カードを持っていなくても利用できるため、「借金はしたくないが、柔軟に支払いたい」という層にも広がりました。
3. 支払い時期をずらせる心理的な余裕
給料日前で手元資金が少ないときでも、「後払いなら今買えて、支払いは後で」という選択ができます。
分割払いやリボ払いと比べ、短期間で完済する前提のサービスが多く、「長期の借金を抱えている」という感覚が薄くなる点も、利用ハードルを下げています。
日常生活での「後払い」の広がり
かつてはファッションECサイトなど特定分野に偏っていた後払いですが、今ではさまざまな場面に浸透しています。
【家電の購入】
冷蔵庫や洗濯機など、突然の故障で「すぐに必要」になる高額商品の購入時に、後払いが選ばれるケースが増えています。
【旅行・レジャーの予約】
航空券や宿泊予約サイトの中には、後払いに対応しているところもあり、「まず予約だけ確保し、支払いは後で」というスタイルが可能になりました。
【日用品・食料品の購入】
ネットスーパーやコンビニ受け取りサービスでも後払いが使えるようになり、数百円〜数千円単位の小さな決済にも利用されるようになっています。
こうした利用シーンの広がりが、「特別な支払い」だった後払いを、「日常の支払いのひとつ」に変えつつあります。
「便利さ」の裏にある危険性と借金リスク
後払いは非常に便利な一方で、その仕組みを正しく理解していないと、「気づかないうちに借金が膨らんでいた」という事態になりかねません。
1. 実質的には「短期の借金」である
後払いは、購入時点ではお金を支払わず、後日まとめて支払う仕組みです。
名目上は「後払い」でも、実態としてはサービス提供会社から一時的に立て替えてもらっているため、「短期的な借金」といえます。
支払いが遅れれば、延滞金や手数料が発生することもあり、「手軽さ」だけを見て使いすぎると、想定以上の負担になる可能性があります。
2. 「小さな金額の積み重ね」の危険性
1回あたりの利用額が数千円でも、複数の後払いサービスを同時に使うと、翌月にまとめて大きな請求になることがあります。
「少額だから大丈夫」と考えていると、いつの間にか複数の支払いが重なり、家計を圧迫する危険性があります。
3. クレジットカードと併用すると全体像が見えにくい
クレジットカードの利用に加えて、後払いも並行して使うと、「自分が今どれだけの金額を将来払わなければならないのか」が把握しづらくなります。
支払いの時期や金額がバラバラになると、返済管理が難しくなり、結果的に借金状態を長引かせる要因になりかねません。
安全に後払いを活用するためのコツ
後払いは、ルールを決めて上手に使えば、家計に柔軟性を持たせる便利な手段になります。
しかし、使い方を誤ると、借金トラブルや支払遅延につながる危険性もあるため、以下の点を意識することが重要です。
「利用額を一元管理する」
家計簿アプリやメモアプリで、「どのサービスで、いくら後払いしているか」を必ず記録しておく。
「利用するサービスを絞る」
複数のBNPLサービスに手を出しすぎず、「メインで使うのは1〜2社まで」など、自分なりのルールを作る。
「支払日を必ず可視化する」
スマホのカレンダーやリマインダーに支払期限を登録し、「うっかり払い忘れ」を防ぐ。
「明細を定期的にチェックする」
不正利用の早期発見や、使いすぎの予防のためにも、月に数回はアプリやWeb明細を確認する習慣をつける。
「高額商品は本当に必要か再確認する」
「後払いだから買える」ではなく、「今、現金で払えるとしたら本当に買うか?」という視点で判断する。
これからの後払いとの付き合い方
後払いは、今後も市場拡大が予測される注目の決済手段です。
「すぐに手に入る」「スマホだけで完結する」といった便利さによって、日常生活に深く入り込んでいくでしょう。
ただし、その本質は「支払いを先延ばしにする仕組み」であり、見方を変えれば短期の借金でもあります。
サービスの仕組みや危険性を理解したうえで、自分の収入と支出のバランスを踏まえた「無理のない範囲」で利用することが、これからの賢い付き合い方と言えるでしょう。