裁判所を通じて行う任意整理的な手法
■待定調停について
特定調停とは、債務者が簡易裁判所に手続きを申し立てて、簡易裁判所の調停委員2名が仲裁者として活動し、当事者同士の合意を形成することで債務整理を進める手続きです。
債務額が比較的小さい場合の債務整理方法として、任意整理と並んで利用されます。
任意整理の場合、債務者自身(またはその代理人である弁護士や司法書士)が業者と交渉を行いますが、特定調停では簡易裁判所の調停委員がその役割を担います。
したがって、特定調停はある意味で裁判所を介した任意整理ともいえます。
調停委員は弁護士や元裁判官などの専門家で構成され、債務者を代表して債権者との和解交渉を進行します。
これにより債務者は債権者と直接交渉することがありません。
調停が成立すれば、判決と同じ効果を持つ調停調書が作成され、その内容に基づいた返済計画に従って返済が行われることになります。
■特定調停の流れと必要な書類
特定調停の申立に必要な書類は次の通りです。
・申立書(債権者一社ごとに作成)
・債権者の商業登記簿謄本
・債権者名簿
・借入明細(契約書、領収書、残高証明書、振込金受領証など)
・申立人の収入証明(給与明細、源泉徴収票など)
・申立人の支出証明(家計簿、各種ローン契約書、学費や医療費などの領収書など)
・資産目録(不動産、預貯金通帳など)
【特定調停のメリットとデメリット】
個人が行うには魅力的な手段だが…
■メリットはコストの低さ
特定調停は手続きがシンプルで、債務者が自ら行動できるほか、弁護士に依頼すると貸金業者一社につき4万〜6万円程度かかるのに対し、自分で行えば約8000円程度とコストを大幅に削減できます。
■デメリットは債務があまり減少しないこと
①過払い金は回収できない
簡易裁判所の調停委員は過払い金の返還に関する交渉には関与しませんので、その部分は別途業者と交渉しなければなりません。
➁裁判所に出向く必要がある
特定調停では申立人自身が裁判所に出向く必要があります。
債権者が多かったり、調停が長引く場合はその都度出向かなければならず、仕事で休みを取りにくい人にとっては負担が大きいと言えるでしょう。
③支払わなければならない金額が増加する
通常の任意整理は、未払い利息や遅延損害金を除いた元金だけの支払いを前提に和解が行われますが、特定調停では調停成立日までの未払い利息や遅延損害金が総債務に含まれます。
④調停証書通りに返済されない場合は即座に強制執行が行われる
調停証書は判決と同等の効力を持つため、調停で決まった通りに返済されない場合は、即座に給与差押え等の強制執行を受けます。
このように、特定調停には一般的な任意整理にはない欠点が存在します。
実際には、欠点の「③支払わなければならない金額が増加する」は債権者が多かったり抵抗により調停が長引く場合、総債務が増えてしまうため、「債務者に不利」という理由から、この特定調停を選択したり勧める弁護士はあまりいないのが現状です。