個人再生における「債務の届け出・調査・決定」の全体像
1. すべての借金を洗い出す:債権者情報の整理
個人再生を申し立てる前に、まず「どこから・いくら借りているのか」を一覧化する作業から始まります。
・クレジットカード会社
・消費者金融
・銀行や信用金庫
・携帯電話端末代の分割払い
・住宅ローン・自動車ローン など
弁護士は、依頼者からのヒアリングや、取引明細・請求書・信用情報機関の情報(CIC、JICCなど)をもとに、すべての債権者を洗い出し、「債権者一覧表」を作成します。
ここでの漏れや記載ミスは、後の債務の届け出・調査・決定の段階で大きな問題となるため、「昔の借金」「もう請求が来ていない借金」も含め、思い当たるものは必ず弁護士に伝えることが重要です。
2. 裁判所から債権者への通知:債務の届け出のスタート
個人再生の申立てが受理されると、裁判所は債権者一覧表に記載された各債権者に対し、「あなたの会社の債権額を裁判所に届け出てください」といった内容の通知を送付します。
この段階は、債権者側が自社の債権を正式に申告する手続きであり、
・元本
・利息
・遅延損害金
など、債務の内訳を明らかにしてもらう重要なプロセスです。
3. 債権者からの「債権届出」
通知を受けた債権者は、定められた期限までに、裁判所へ債権届出書を提出します。
ここで申告された額が、個人再生の再生計画に反映される「候補」となる債務額です。
例えば、
・請求書の残高よりも多い額が届出されている
・取引が終わっているはずなのに債権が記載されている
といったケースもあり得るため、そのまま鵜呑みにするのではなく、後述の調査で内容を精査していきます。
4. 弁護士による「調査・照合」
債権者から届いた債権届出と、依頼者がもともに申告した情報(債権者一覧表、取引履歴など)とを、弁護士が一つひとつ照らし合わせます。
ここで行う主な調査のポイントは、次のような点です。
・金額が正しいか(過大請求や計算ミスがないか)
・利息や遅延損害金の計算方法が適切か
・時効にかかっている借金が紛れ込んでいないか
・すでに完済している債務が含まれていないか
個人再生では、この調査段階での確認が甘いと、本来より多い債務額を前提とした再生計画を立ててしまい、返済負担が不必要に重くなるおそれがあります。
5. 債権額に疑問がある場合の「異議申立て」
調査の結果、「この債権額はおかしい」と判断される場合、弁護士が裁判所に対して異議を申し立てます。
具体的には、以下のようなケースが問題になります。
・時効が成立している借金なのに、債権として届出されている
・過払い金があるにもかかわらず、その精算がされていない
・利息制限法を超える利率で計算されている
異議申立てにより、裁判所が改めて債権の内容を審査し、必要に応じて債務額を修正します。
ここでの弁護士の判断と対応が、最終的な債務の決定に大きく影響します。
6. 裁判所による「最終的な債権額の決定」
異議申立てや調査の結果を踏まえ、裁判所が「認められる債権額」を最終的に確定します。
この決定は、
・個人再生の再生計画案でどれだけ減額できるか
・毎月いくら返済していくのか
という「返済計画の基準」となる非常に重要なものです。
確定した債権額に基づき、弁護士と相談しながら、現実的に支払い可能な範囲での返済額・返済期間(通常3〜5年)を組み立てていくことになります。
【この段階での重要な注意点】
1. 債権者の「記載漏れ」は致命的になり得る
債務の届け出・調査・決定の局面で最も問題となるのが、「債権者の漏れ」と「債務額の誤り」です。
債権者を一社でも記載し忘れてしまうと、その借金が個人再生の対象から外れてしまい、手続きが終わった後も、
・減額されないまま
・全額の返済を請求される
可能性があります。
「昔の小さな借金だから」「もう連絡が来ないから」と自己判断で除外せず、思い当たるものはすべて弁護士に伝えることが、トラブル防止の第一歩です。
2. 過払い金・時効の可能性は必ず弁護士に相談を
過去に高金利での借入れをしていた場合や、長期間支払いをしていない借金がある場合、
・過払い金が発生している
・時効により支払義務が消滅している
といった可能性があります。
これらを見落とすと、本来より多い借金を前提に個人再生を進めてしまうことになります。
取引履歴や古い明細が残っていれば、できるだけ弁護士に提出し、債務の調査に活用してもらいましょう。
まとめ:個人再生の成否を左右する「情報の正確さ」
債務の届け出・調査・決定は、個人再生の中でもとりわけ重要なプロセスです。
ここで確定された債務額が、その後の返済計画をすべて決めてしまうと言っても過言ではありません。
・借金や債権者の情報をできる限り正確に伝える
・あいまいな記憶や不安な点は、そのままにせず弁護士に相談する
・過払い金や時効の可能性も含めて、調査を任せる
こうした姿勢で弁護士と密に連携することが、無理のない返済計画につながり、個人再生を成功させる近道になります。