「アンカリング効果」が多重債務を招く?

思わぬ落とし穴

「アンカリング効果」があなたを借金漬けにするとしたら…

「月々4,000円から持てます」
「初月負担はたった1,000円!」

こうしたフレーズを見て、「意外と安いかも」と感じたことはないでしょうか。
実はその「安い」という感覚自体が、アンカリング効果という心理のクセに左右されている可能性があります。
そして、この小さな思い込みが積み重なることで、多重債務へと転落してしまうケースが少なくありません。

アンカリング効果とは何か
アンカリング効果とは、最初に提示された数字や情報が、後の判断基準(アンカー=錨)になってしまう現象のことです。

例えば、「定価80万円のソファが、今なら40万円!」と聞くと、本来は40万円でも十分高いはずなのに、「半額だからお得だ」と感じやすくなります。
これは、最初に耳にした「80万円」という数字に思考が縛られてしまい、冷静な価値判断ができなくなっている状態です。

このアンカリング効果は、日常の買い物だけでなく、借金や返済の判断にも深く入り込んできます。

【-月々の負担ばかり見てしまう危険性
お金のサービスに関する広告では、「総額いくらかかるのか」よりも「月々いくらなら払えるか」が前面に押し出されることが多くあります。
・「月々5,000円から利用OK」
・「月々3,000円のリボ払いでラクラク返済」

こうした「月々○円」という数字を先に見せることで、「これなら自分にも払えそうだ」という印象を植え付けてしまうのです。

アンカリング効果によって、私たちの頭の中では次のようなすり替えが起こります。
・本来考えるべき →「総支払額はいくらか」「いつまで払い続けるのか」
・実際に意識が向く →「月々の負担がこのくらいなら大丈夫そう」

この「視点のすり替え」が、特にリボ払いの場面で大きな落とし穴になります。

多重債務を招くリボ払いの仕組み
リボ払いは、一見すると家計にやさしい支払い方法のように見えます。
利用残高にかかわらず「毎月の支払いが一定額」であることが多く、「家計管理がしやすい」と宣伝されることもあります。

しかし、その裏側には次のような特徴があります。
・金利(手数料)が高めに設定されていることが多い
・残高が増えると、返済期間がどんどん延びていく
・表面上の「月々○円」が変わらないため、借金総額の増加が実感しにくい

たとえば、「月々3,000円のリボ払いなら余裕」と思ってパソコンを買った人が、同じ感覚でスマホ、家電、旅行代金までリボ払いにしていくとどうなるでしょうか。

最初は3,000円だった毎月の返済が、いつのまにか2万円、3万円と膨らみ、
気づいた時には「何にいくら使ったのか把握できないけれど、とにかく残高が減らない」という状態に陥ってしまいます。

生活費が足りなくなり、キャッシングや消費者金融に手を出してしまうと、借金で借金を返す「多重債務」の典型的なパターンに突入します。

なぜ、冷静に判断できなくなるのか
アンカリング効果が厄介なのは、「自分は騙されない」と思っている人ほど、無意識のうちに影響を受けやすい点です。

人は、すべての買い物や契約について細かく計算し、条件を比較検討するだけの時間やエネルギーを持っていません。
そのため、とくに次のような状況でアンカリングの影響が強くなります。
・疲れている、時間がない
・すぐに商品やサービスを手に入れたい
・お金の知識に自信がない
・店員や広告から「お得感」を強くアピールされている

こうした場面では、最初に見た「月々の支払い額」や「割引前の価格」がそのまま基準となり、本来比べるべき「他社との条件」「現金一括との違い」「利息込みの総額」などが十分に検討されないまま、契約が進んでしまいます。

アンカリング効果から自分を守る具体的な方法
アンカリング効果を完全に消すことはできませんが、「影響を弱める工夫」はできます。
リボ払いをはじめとしたクレジット利用で失敗しないために、次のポイントを習慣化してみてください。

1. 「総額」と「期間」を必ずセットで確認する
・月々の支払い額だけでなく、「最終的にいくら払うのか」「何年かかるのか」を必ず確認する
・ショップやカード会社のサイトにある「返済シミュレーション」を利用する
・金利(実質年率)がいくらかをチェックする

「安いか高いか」は、月々の額ではなく「合計いくら出ていくか」で判断する癖をつけましょう。

2. 自分なりの比較基準を持つ
広告の数字ではなく、自分側の基準をあらかじめ決めておくと、アンカリング効果に流されにくくなります。
・「利息を払う買い物は原則しない」
・「リボ払いは使わない、どうしても使うなら○万円まで」
・「ローンを組むのは耐久年数が長いものだけに限定する(家・車・教育など)」

こうした「マイルール」を持つことで、その場の雰囲気やポップ広告に振り回されることが減ります。

3. 即決しないで、一度立ち止まる
・その場で契約せず、いったん家に持ち帰ってから考える
・衝動的に「今しかない」と思ったときこそ、一晩寝かせてから判断する
・家族や友人、第三者に意見を聞いてみる

時間を置くことで、最初に聞かされた「お得そうな数字」の影響が薄れ、冷静な視点を取り戻しやすくなります。

お金の判断力を鍛えるという発想
アンカリング効果は、決して「性格が弱い人」だけの問題ではありません。
人間の認知の仕組みによる、誰にでも起こりうるバイアスです。

だからこそ大切なのは、「自分も例外ではない」と理解したうえで、
・数字の裏側を見る習慣をつくる
・リボ払いなどの仕組みを事前に学んでおく
・わからないときは専門家や公的な相談窓口(消費生活センター、法テラスなど)に相談する

といった「お金の判断力」を少しずつ鍛えていくことです。

お金の流れは、一度方向が決まると、後から軌道修正するのに大きなエネルギーが必要になります。
アンカリング効果に振り回されず、自分で舵を取れるようになれば、多重債務のリスクをぐっと下げることができます。

「月々いくらか」だけでなく、「本当はいくら払うことになるのか」。
この一歩踏み込んだ視点を持つことが、借金のワナから身を守るための、最初のアンカー(錨)になるはずです。
 

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